光と影の家
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青い空に、水平線のように真っすぐと潔い線を引く屋根のライン。平屋のCOVACO特有の顔は、真正面から見つめられている様で 少し気恥ずかしい気もする。ウッドデッキに面して掃出しの窓が並ぶ外観は、家の中にどんな笑顔があふれているのか、様子を伺いたくなる佇まいだ。低空飛行でスーッと空を切る紙飛行機のような平屋の姿勢から、冬の澄んだ空気にはキリリと厳しく、夏の元気な雰囲気にはワクワク感を与えてくれる、そんな人柄ならぬ家柄が伝わってくる
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玄関を入るとすぐに、土間リビングが一面に広がる。少しずつの段差で仕切られた空間は、土足スペース、土間だけど室内スペース、無垢床のリビング、と色々な顔を持つ。土足スペースの奥はキッチンへと繋がっており、ショッピングで持ち帰ったモノだけでなく、その日の楽しい気持ちもそのままのカタチで家の中に運び込める。土間のコーティング塗装は、自身で行った。少しのチャレンジ精神と家への愛情は、これから積み重ねるわが家への愛着を増すアイテムになるだろう
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土間スペースの一角にワークスペースを設けた。驚くことに、かっこいいデスクはDIYで作った作品。自分で何かを作ったり、手を加えたくなる、そんな気分にさせてくれるのがBinOでの暮らしだ。部屋の隅で寄り添うように息をしている観葉植物たち。もともと育てるのが好きだったS様だが「この家に暮らし始めてから数が増えた」とイタズラに笑った。グレー系のインテリアにグリーンが良く映える
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それぞれに好きなことをしている時間が好きだ。お互いに違う場所で違うことをしていても、何となくの気配を感じられて居心地がいい。自分の時間を過ごして新たな発見があったら相手に伝えたり、2人で同じことをして一緒に笑ったり感動したり。普段から選ぶものが似ていて、意見がぶつかったりケンカすることがない。同じものを見て同じように感じられることが、この世の中で一番尊くて幸せなことである
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ガラスに反射した光はいくつもの線を描いて、天井のどこまでも細く長く照らしていく。元々はたった一つの光源なのに一筋の線にカタチを変えると、途端にその存在を主張してくるのは何故だろうか。優しい雰囲気にもパキッとした雰囲気にもなれる光のカタチとは、本当に不思議なものだ。ぼんやりより、鋭い方が感じ易い。それは、せっかく建てるならこだわった家を建てたいと思う気持ちと似ている気がする
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少し荒々しいところが気に入って、針葉樹合板を採用した造作の洗面台。2坪=4畳は立派な部屋だ。家に居る時間の中でこの場所で過ごす時間は少なくない。写真手前はファミリークローゼットと繋がっており、ファミリークローゼットの先には寝室がある。生活動線を重視し誰に見せるでもない、自分達の暮らしを一番に考えた、まさに「我がまま」で最高の間取りである
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好きなモノと一緒に暮らす。好きなモノしか要らない。好きなモノのためなら、多少の犠牲を払ってもいい。そんな、妥協しない暮らしを実現するのは案外難しかったりする。休日に2人で出かけると、自然とインテリアショップに入ってお気に入りを探す。家に一緒に帰って収納兼ディスプレイの棚に乗せると、まるでスポットライトを浴びた舞台俳優のように静かな笑みを浮かべるのだ。ブラケットライトが生み出す陰影の濃淡は、これからの楽しい日々の表現である
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何度もその扉を開けたくなる。まるで海の底から、太陽がキラキラと反射する海面を見上げているようだ。この場所に長くとどまるための演出ではないとわかっていながら、意表を突く光景に思わず力が抜ける。工場などでよく使われるインダストリアルな壁材と無垢の相性がこんなに良いとは思わなかった。その意外性は、甘いチョコレートを食べながら苦いコーヒーを飲んだ時の感動に似ているが、奇しくもそれは全て計算ずくだったりする
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玄関に軒を出して外側にスペースを設けるのと、建物の一部をくりぬいて玄関スペースにするのでは、こんなに印象が違うのかと この一枚のショットで証明できる。凸と凹。通常、出っ張りをつけると豪華に見えるものだが、この引っ込んだ玄関の何と奥ゆかしいことよ。しかし、天井の板張りは本当の気質を隠せない。ただのおとなしい性格ではないのだ。真っすぐにこちらを見つめ返してくるその姿勢は、奥ゆかしいどころか静かな圧さえ感じさせる
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土間リビングとつながるウッドデッキは、見た目の美しさだけでなく使い勝手が良い。長く伸びた軒は、少しくらいの雨風など寄せつけず、またギラギラと照り付ける太陽からも守ってくれる。お気に入りのソファに座って、大きな窓から外を眺める時間が好きだ。のんびり過ごしていると、デッキに出してある鉢植えたちが恨めしそうに誘ってくる。季節の移ろいや客観視した自分の感情を、ゆっくりと そしてやんわりと心に落としていく